慢性腎臓病(猫)

正常な腎臓ってどんな働きをしている?

腎臓はネコちゃんの体の中で、
・血液から尿をつくり体の中で不要になった老廃物や毒素を尿の中に排泄する
・血圧を調節する
・ナトリウムやカリウムなどの血液中のイオンバランスを保つ
・ホルモンを分泌し血液(赤血球)をつくる
などの働きを担っている臓器です。

病態

腎臓がダメージを受けて十分に機能しなくなる状態を「腎不全」といい、これが長期間続くと慢性腎臓病と診断されます。
慢性腎臓病はネコちゃんの老齢期での発症が多く、死亡率の高い病気です。

原因

慢性腎臓病の原因は明確になっていないものの、中高齢の猫で多く見られます。
基本的に加齢による腎機能の低下がきっかけとなります。その他に尿石症などの泌尿器の病気が影響した二次的なものも原因となる場合があります。

症状

初期:多飲多尿→水をたくさん飲み、尿量が増え、尿の色が薄くなる
中期:食欲不振・体重減少・嘔吐
末期:尿毒症(けいれん発作)・食欲廃絶(ご飯を全く食べない)

診断

血液検査や尿検査、血圧測定のほか、腎臓の超音波検査などを実施して、総合的に判断する必要があります。

血液検査:BUN・cre(腎臓の機能を表す数値)、ミネラル(リン、ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウム) BUNとcreの数値は、腎臓の状態を把握する上で大切ですが、これらは腎臓の7割ほど障害がみられないと異常値として測定できないため、最近ではより早期に腎障害を発見できる項目として、SDMAというものが注目されています。

尿検査:尿比重(尿が濃いのか、薄いのかを調べる項目)や尿中の蛋白質の有無を確認します。 尿中に蛋白質が出ている場合、UPCという蛋白質がどれだけ出ているかの検査が必要です。

血圧測定:慢性腎不全の場合、血圧が高い(高血圧)ことがあります。当院では安全に血圧を測定することができます。

超音波検査:腎臓の大きさや状態を確認することで他の病気と区別します。

ステージ分類

 

治療

輸液(皮下点滴) 脱水がみられる場合に実施します。
血圧を下げる薬 血圧が高い場合には血圧を下げる薬を投与します。
尿蛋白の薬 尿タンパクが認められる場合にはテルミサルタンなどを投与します。
食事療法 ステージ2以上の猫に対して、腎臓病用の療法食によって食事中のリンを制限します。慢性腎臓病の猫では腎臓の機能が低下して、リンを排泄できなくなる為、食事中のリン制限が必要になります。 リンの数値が高くなるとさらに慢性腎臓病を悪化させてしまう原因となります。
サプリ 病気が進行し、食事管理のみでリンのコントロールができなくなった場合にはリンの吸着材の投与を開始します。各種、サプリを揃えているので猫ちゃんの好みに合ったものを提案させて頂きます。

まとめ

慢性腎臓病は高齢の猫にかかることが多い病気です。 定期的な健康診断(CATドック)を行い、病気の早期発見・早期治療を行うことで健康寿命を延ばせます。他院からのセカンドオピニオンなども受け付けております。 是非一度、診察にいらしてください。